エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない

6.真実

 翌日、愛美は朝から色んな部署に顔を出していた。

『この書類、どうしても各部課長の承認印が必要でして。もう内容は全員から承諾してもらってるので、押印だけしてもらってください』

 という博明からの依頼で、書類を持って部課長のところを巡っていたのだ。

(あと半分くらいかな)

 午前中で終わるだろうと思っていたが、想像以上に時間がかかっていた。部課長は基本的に忙しく、急な訪問では中々捕まらないのだ。
 それでも昼過ぎには六割ほど承認を貰えていた。



「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。では失礼します」

 企画部のフロアで承認印を貰った後、廊下を歩いていると給湯室から気になる話が聞こえてきた。

「それって営業部でしょ?」
「あー……今、大変らしいね」
「しばらく関わりたくないなー」

(営業部?)

 ひそひそと聞こえてきた単語に、愛美は思わず足を止めた。

「営業一課ってちょっと前からギスギスしてたもんねぇ」
「巻き込まれる二課も可哀想……」
「昔は花形部署だったのにね」

 何か部署内で問題があったようだ。それも営業の名を穢すような。

(今から行こうとしてたのに……どうしよう)

 ただでさえ憂鬱なのに、余計に行きたくなくなってしまう。
 愛美はため息をつきながらその場を後にした。



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