エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない
 健吾が黙ったのを確認すると、室田は課長へと向き直った。

「課長、貴方も分かっていますね? クレームを揉み消し、高橋健吾の失態を日高愛美に押しつけて、上への報告を誤魔化した。違いますか?」
「……はい。おっしゃる通りです」
「この会社に腐敗した部署は必要ありません。営業一課は一旦廃止。二課と統合し、再編成を行うものとします」
「はい。……日高君、本当にすまなかった」

 課長は深々と愛美に頭を下げた。

(どうなってるの……?)

 怒涛の展開に頭がついていかず、思わず後ずさる。
 もう一歩下がろうとした時、博明の手が腰に回された。

「後で説明します」
「ありがとうございます……分かりました」

 ひそひそと耳打ちされ、愛美も声を潜めて返す。
 あまり現状が理解出来ていないけれど、博明がいれば大丈夫。
 愛美にはそんな気持ちが湧き出ていた。

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