エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない

7.告白

 愛美は博明の部屋にきていた。
 騒動の後、博明に『残業時間短縮のため』と丸め込まれ、会社を連れ出されたのだ。

(今日の就業後は話があるって言ってたけど……)


 愛美は今、ソファーに座らされ、ホットワインを持たされている。

「まずは一息ついてください」
「ありがとうございます……それで、さっきの出来事なんですけど、一体何がどうなったのでしょうか」

 愛美が聞くと、博明は詳細を語ってくれた。

 健吾は取引先の女性に言い寄っていたらしい。
 それも上から目線で「追加契約したら付き合ってやる」という態度だったそうだ。
 それが段々とエスカレートし、ホテルに連れ込もうとしたのだ。

 当然クレームを入れられ、契約を切られる。
 健吾に泣きつかれた課長は、契約を切られた理由を隠蔽するため、愛美に罪を押し付けたということだった。
 
「そんな風に暴走する人だとは思いませんでした……」

 愛美は渡されたホットワインの湯気を眺めながら、呆然と呟いた。

「日高さんと付き合えたことで、変な方向に自信がついてしまったんでしょうね。女性なら誰でも自分に魅了されると」
「まさか……」
「こんな素敵な女性ですから、無理もないですよ。彼に同情はしませんが」
「……」

 本当のところ、健吾が何を考えていたのかは分からない。
 けれど、他社の社員に迷惑をかけたことは謝罪し、反省すべきだ。

(きちんと謝罪して、心を入れ替えて。そしたらやり直せるよ、健吾)

 愛美は心の中で健吾に語り掛け、それ以上彼のことを考えるのは止めにした。


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