エリート御曹司は不運な前向き社員を甘くとらえて離さない
 当然、愛美も博明のことが好きだ。
 この手を取れば、望みが叶う。

(手を握れば……)

 手が震えて動かない。
 博明の手を見つめていると、じわりと涙が溢れてきた。

「困らせてしまいましたか?」
「違うんです! 嬉しすぎて、幸せすぎて……私も博明さんのこと、好きになってしまって……無理だって思ってたから」

 そこまで言うと、博明に手を引かれた。
 そのまま博明の胸の中へと引き込まれ――

「良かった……!」
「わぁっ!」

 強く抱きしめられた。
 触れ合っているところから、博明を感じて愛美は身体を固くした。

 愛美が緊張していることに気がついた博明は、そっと力を緩める。
 そして、愛美に目線を合わせた。

「愛美さんのことは、お名前を知った時からずっと気になっていました。きっとひたむきな方なんだろうと……。秘書にした時、僕の見立ては正しかったと思いました」
「ど、どうしてですか? 私、何も出来なかったのに……」
「議事録です。仕事の初日にもかかわらず、要点をついた素晴らしい出来でした。僕が何も言わなくても、仕事を見つけて動いてくれる人だと感心したものです」
「あ、ありがとうございます」

 真正面からの誉め言葉に愛美の顔はどんどん赤くなっていく。

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