女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる

最低男

金曜日の夜同期の松島浩子に呼び出されたとき、電話の向こうは泣き声だった。
「ちょっと浩子、どうしたの！？」

１人で行動することを苦手としている浩子が今は１人、居酒屋のカウンター席で泣きながらお酒を飲んでいる。

どう見ても普通じゃない状況に困惑しながら佐藤舞が声をかけると、浩子は真っ赤に充血した目で視線を向けた。

「舞……うわぁん！」
カウンター席に座ったままで両手を伸ばして舞の体を抱きしめる。

まるで子供みたいになきじゃくっている浩子の体を抱きしめ返しながら「なにがあったの？」と質問するが、泣きじゃくっているためなにを言っているのか聞き取れない。

周囲の目を気にしつつ浩子の隣に座って、生ビールを注文した。

浩子がこんな状態じゃ楽しく飲む雰囲気にはならないだろうけれど、なにも注文しないわけにはいかなかった。