女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
その拍子に手に持っていたお弁当箱を落としてしまった。
ちゃんと蓋が閉まっていなかったため、中身がコンクリートの上に散乱する。

「あ、ご、ごめんなさい！」
さすがに動揺しているようだけれど、なんだかなにもかもどうでもよくなってしまった。

どうせ冷食と残り物を詰め込んだだけのお弁当だ。
文句を言うほどのものじゃない。

「別に、大丈夫です」
そう言うと女性社員はあからさまに安堵の表情を浮かべた。

しゃがみこんで片付ける舞を手伝おうともしない。
「大丈夫ですか？」

舞に近づいてきて声をかけたのは小泉大樹だった。
舞は驚いて顔を上げる。

目の前に小泉大樹の整った顔があって、一瞬自分の心臓がドクンッと跳ねるのを感じた。
だけどそれはすぐさま嫌悪に変わる。
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