女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
「ね、おちついて」
舞は浩子にお手拭きを渡し、涙をふかせた。

それでも浩子の目からは次から次へと大粒の涙が溢れ出して止まることはない。
鼻もかみすぎて、赤くなっている。

「……騙されてたの」
舞の注文したビールが届いた頃、浩子はようやくそう言った。
「騙されてたってどういうこと?」

「彼氏!」
大きな声を上げる浩子に舞は目を見開いた。

確か浩子には付き合いはじめて間もない彼氏がいると聞いていた。

彼氏ができたときにはすごく自慢されたことを覚えているし、羨ましいと感じたことも覚えている。

「嘘でしょ。付き合い始めてまだ一月くらいじゃなかったの?」
たった一月じゃ大きな喧嘩だってできない。
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