女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
「え、あぁ。わかった」
「金額は前と同じでいい?」

「もちろん」
「よかった! じゃ、次の休みにお願いね。彼氏役!」

女性社員はポンッと大樹の肩を叩いて公園を出ていく。
その後ろ姿を見送って大樹はひとまず安堵のため息を吐き出した。

少なくても今の彼女には勘違いさせていないとわかったからだ。
他にも大樹に彼氏役を頼んでくる女性社員は沢山いた。

ストーカー被害に合っているからとか、昔の同級生を見返したいからとか。
大樹はそれに見合った対価をもらう。

この関係なら相手を傷つけないし、勘違いもさせない。
これが最善なのだと思っていたけれど……。

大好きな人からの蔑むような顔を思い出し、胸が痛くなる。
大樹は服の胸部分をギュッと掴んで「難しいなぁ」とつぶやいたのだった。
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