女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
彼は上司だし、妻子がいることだってもちろん知っていた。

それでも、この気持を告げずにはいられないくらい、浩子の中で中村雄一の存在は大きくなっていた。

「どうかしたのかい? 仕事の相談だろう?」

こうして部下に呼び出されることはきっと日常茶飯事なのだろう、中村は仕事を心配をしてくれていた。

だけど浩子は左右に首をふり、ついに自分の気持を打ち明けたのだった。
「私、中村さんのことが好きです!」

まるで学生時代のように頬を赤く染めて、中村の顔を直視することもできないくらい恥ずかしくて、ずっとうつむいていた。

結果は聞かなくてもわかっている。
中村は際しを裏切るような人ではないし、この気持が届くことはないから。

それでもこうして気持ちを口に出しただけで浩子はスッキリとした気分になっていた。
「聞いてくださってありがとうございます」
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