女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
それだけ言って立ち去ろうとした、そのときだった。
不意に中村が手の掴んできたかと思うと、引き寄せられていたのだ。

あこがれの人の腕の中で浩子はこれが夢じゃないかと考えた。
自分の願望が強すぎて、白昼夢をみているのだと。

だって、こんなことありえない。
中村さんが、自分を抱きしめているなんて……。

まさに夢見心地になったとき、今度は唇が押し当てられていた。
愛煙家の中村とのキスはほろ苦くて、だけど最高に幸せなものだった。

「ありがとう。すごく嬉しいよ。実は僕もずっとキミのことが気になっていたんだ」
「中村さん……」

耳元で囁かれた言葉に体がとろけてしまいそうだった。
それから、中村と浩子の秘密の関係が始まった。

絶対に誰にも知られてはいけない関係。
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