女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
だけど仕事中に視線が会えばかすかにほほえみ合う関係。
それがスリリングでもあり、浩子はどっぷりとはまっていってしまったのだ。

不倫はいけないことだとわかっていながら、中村とのデートをやめることはできなかった。

顔見知りと会うわけにはいかなかったから基本はホテルに直行だったけれど、それで大好きな中村と一緒にいられるから文句はなかった。

「ねぇ、たまには旅行へ行きたいわ」
だけど、そんな関係も1年ほど続くとさすがに息苦しくなっていた。

この頃浩子は不倫について色々と調べていて、実際に経験した人の手記なども読んでいた。
その中には奥さんに出張だと嘘をついて不倫旅行へ行く話も多く出ていた。

あわよくば、中村もこの手を使ってくれないかと考えていたのだ。
「それは難しいな。今の仕事には出張なんてないから、怪しまれる」

ベッドの上でタバコを吸いながら中村はそっけなく答えた。
まるで浩子の考えを見通していたかのような答えにガッカリしてしまう。

「大丈夫。僕が好きなのは浩子だけだから」
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