女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
☆☆☆

それは浩子が25歳の誕生日を迎えた日のことだった。

この日のために中村は少し早めに仕事を切り上げて、ふたりでホテルへ向かった。
誕生日にも同じようなラブホテルで過ごすのかと辟易した気持ちになった。

中村は浩子に似合うネックレスをプレゼントしてくれたけれど、そこについていたのは本物のダイヤモンドではなく、レプリカだと気がついた。

そのとき、まだ浩子の中でくすぶっていた中村への情熱がフッと吹き消された気がした。

きっと奥さんには本物のダイヤモンドを送っているんだろう。
だけど私にくれるのはレプリカだ。

それには中村の本音が詰まっている気がした。
その日、浩子は初めて中村から求められることを断ったのだった。
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