女好きの最低男がなぜか私だけ溺愛してくる
「どうも」
舞はさげすむような視線を中村へ向ける。

浩子を脅して泣かせた男は、全然反省していないみたいだ。
女性社員は高いヒールをカッカッと響かせながら部屋を出ていく。

見たことのない顔だから、他の部署の子だったみたいだ。
「さ、佐藤くん、今見たことは……」

「誰にも言いません」
中村が最後まで言い切る前に言った。

悔しいけれど、浩子の写真を持っている限りこちらから下手に動くことはできなかった。

中村はホッとしたように表情を緩めて「そうか。ありがとう。なんだったら君もどうだい?」と、両手を差し出してくる。

「結構です!」
浩子が言っていた通り中村は陰で人気があるのだろう。
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