月とスッポン  牛に引かれて
序章

ちょっと気になっていた展覧会を見に国立新美術館へと足を運んだのはいい。

電車で最短1時間の距離なのに、こうも世界が違うと落ち着かない。

スキニーパンツに、ストライプのオーバーシャツのシンプルな格好は、どこへでも溶け込める万能スタイル。

のはずなのだが、
どうも浮いている感じがする。

せっかくここまで来たのだから、
たまには背伸びをしてオシャレなカフェで
なんて考えていた自分を殴りたい。

それでも、どこかでと店を覗いては見るものの、一歩を出すことが出来ない。
キラキラした世界に踏み出す勇気が出ない。

どうにか絞り出した勇気を使って、落ち着いたカフェテリアで、
ブレンドコーヒーとシンプルなサンドイッチを目の前に、なんとも言えない敗北感に浸る。

同じ世界で、同じ東京なのに・・・

< 1 / 101 >

この作品をシェア

pagetop