月とスッポン  牛に引かれて
「あの、お姉様って呼んでいいですか?」

目を輝かせて言う女性に令嬢は意気消沈しているのが、背中からも感じ取れます。

「好きになさい」

令嬢も呆れ顔でため息混じりで仰れば、嬉しそうに

「私、お姉様に生まれ変わって、世界の頂点を目指す!」

と女性は人差し指を空に掲げております。

「目指してどうするのですか?」

常務もどうしようもない状況に慣れたようですね。
そもそも生まれ変わる事前提の会話が進んでいる事に疑問を持って頂きたいです。

「国際的大富豪の妻になって、強かに生きる」

女性の発言に、気分を害したのか常務が反論致しました。

「茜が望むなら好きな物を買ってあげれるぐらいのお金なら私も持っています」

本庄辞書室長もため息をついておられるので、常務の発言も少しずれている様に思われるのは私だけではない様です。
女性の名前は茜様とおっしゃるのですね。
なんもと骨のある女性です。

「お金があっても、あのお美しいパーフェクトな容姿は生まれ変わらないと手に入らないでしょうが!」

即座に反論され、常務が少し小さくなった様に見えます。こんな常務初めてです。
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