月とスッポン 牛に引かれて
急な階段を登り切れば、国宝の本堂の全貌を堪能する。
繋いだ手を空に掲げ
「見てください」
と【善光寺】と書かれた額を指す。
「善という文字が牛の顔が、この3文字の中に鳩が5羽隠れているそうですよ」
「善と光に2羽づづですよね。あと1羽は?」
「あそこではないですか、あの寺の点です」
繋いだ手を少しだけ動かし、指差す。
よくわからない。
手に顔を近づけ、差した指の直線上に顔を動かす。
柵ギリギリに体を傾ければ、落ちないように大河が私を支えてくれる。
体を大河に委ね、目を細め、寺の点をじっと見つめる。
「わからない。鶴岡八幡ぐらいわかりやすい鳩にして欲しい」
振り返れば、大河の顔が思った以上に近くにあり驚いて、体勢を崩す。
咄嗟に支えてくれた大河が私を抱き抱える。
ベストショットを撮ろうと順番を待っているだろうおじさんと目が合った。
「すみません」
大河ではなく、おじさんに謝ってしまった。
大河の手を取りその場から離れる。
おじさんは和かに笑ってくれているけど、恥ずかしい。
まるで観光地で羽目を外す旅行客でないか!
ここは観光地で、私は旅行客なのだが。
なのだが、ここは1400年もの間人々の心を支えてきた神聖なる寺院なんだ。
『神社仏閣は、目上の人のお家にお邪魔させてもらうって事なんだ。だから、行儀良くしなきゃいけないんだよ』
そう教わってきた。だから、いつも心がけている。
のに‼︎
繋いだ手を空に掲げ
「見てください」
と【善光寺】と書かれた額を指す。
「善という文字が牛の顔が、この3文字の中に鳩が5羽隠れているそうですよ」
「善と光に2羽づづですよね。あと1羽は?」
「あそこではないですか、あの寺の点です」
繋いだ手を少しだけ動かし、指差す。
よくわからない。
手に顔を近づけ、差した指の直線上に顔を動かす。
柵ギリギリに体を傾ければ、落ちないように大河が私を支えてくれる。
体を大河に委ね、目を細め、寺の点をじっと見つめる。
「わからない。鶴岡八幡ぐらいわかりやすい鳩にして欲しい」
振り返れば、大河の顔が思った以上に近くにあり驚いて、体勢を崩す。
咄嗟に支えてくれた大河が私を抱き抱える。
ベストショットを撮ろうと順番を待っているだろうおじさんと目が合った。
「すみません」
大河ではなく、おじさんに謝ってしまった。
大河の手を取りその場から離れる。
おじさんは和かに笑ってくれているけど、恥ずかしい。
まるで観光地で羽目を外す旅行客でないか!
ここは観光地で、私は旅行客なのだが。
なのだが、ここは1400年もの間人々の心を支えてきた神聖なる寺院なんだ。
『神社仏閣は、目上の人のお家にお邪魔させてもらうって事なんだ。だから、行儀良くしなきゃいけないんだよ』
そう教わってきた。だから、いつも心がけている。
のに‼︎