月とスッポン　　牛に引かれて
人が少ない場所を陣取り、何度か深呼吸をして心を落ち着かせる。

「はしゃいでしまった」
「それの何が問題なんですか？」

不思議そうな顔をしている。

「ここはお寺なんです。神様のお家なんです。人の家で騒いじゃダメでしょ！」
「そうですか？自分の家に人が訪ねてきて、楽しそうにしていたら、嬉しくないですか？」

その考えなかった！

目を見開き大河の顔を見れば、優しく微笑んでいた。

「騒がれるのは迷惑ですけど、楽しそうに笑ってくれているのなら嬉しいと思いますよ」
「確かに」

「では、楽しみましょう」

感心している私の手を取り、参道を歩く。

長野名物おやきを買い、仁王門の中で佇む阿形・吽形を見上げ、芋シェイクを飲みながら、また別のお店のおやきを買う。

「同じ味を買う必要あります？」
「食べ比べるには同じ味でないと意味がないと思いますけど」

「野沢菜は鉄板としていいんですけど、かぼちゃとかネギ味噌とかかぼちゃとか気になるじゃないですか！」
「では、別のお店でカボチャを買いますか？」

「イヤ、お腹いっぱいです」

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