月とスッポン  牛に引かれて
なんの疑問も持たずに一つづつ買って、一口食べたら大河に渡し、大河も一口食べたら私に戻すを繰り返して完食していく。

そんなに大きくないと思っていたおやきも食べ応え満点で、お腹が満たされる。

定番の七味唐辛子を使ったお菓子や長野を感じさせる調味料。
誰がどう見てもいった場所がわかるお菓子などを見て回る。
もう1日あると思うと、口にする物を買うに気が引けると店を出る。

「これはもはやデザートです」

いつの間にか買ってきたおやきを渡される。
すでに一口食べたようで、中のふんだんに入ったかぼちゃが見えている。

「あっま。デザートだぁ。これは食べれてしまう」

経堂に入る前に、食べ切ろうと道を逸れると二つの供養塔。
説明を読めば
「石造ほう?」
「宝篋印塔(ほうきょういんとう)ですね。源義経の家臣だった佐藤継信・忠信兄弟の供養塔ですね」

おう、書いてある。

「二人は義経四天王の内の二人で、源平盛衰記で歌舞伎や落語の演目に登場する人物ですよ」
「詳しいんですね」

「平家物語と合わせて読むとなかなか面白いですよ」
「そうなんですね」

「読む機会がありましたら、ぜひ一緒に読んでみてください」
「読む機会があったらね」

永遠に来ないと思うけどとは言えなかった。

食べ終わり、経堂へと入り、案内に従って位置に着き一緒に入った人と力を合わせてゆっくりと輪蔵を回す。

外に出て輪廻塔を回せば、なんだかよくわからないけど、徳と積んだ気分になる。
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