月とスッポン  牛に引かれて
戊辰戦争から第二次世界大戦に至るまで、戦没者二百四十万余柱の英霊を祀る日本忠霊殿へ訪れ、中にある資料館をじっくりと見て回る。

ゆっくりじっくり見たから、くだらない問答も終わっているはずだとほっとする。

「私に会えます」

いつも憎たらしい程自信に満ち溢れている大河が、自信なさげに小さな声で言った。

終わってなかったのかよ思いつつも、問われれば答えなければならない。

それが問答。
ちょっと違うか。

なんて自分に自分でツッコミを入れてしまった。

モジモジしている大河がちょっと可愛いけれど、
「私に会える」と言われても、物理的に無理じゃね?

「仕事時間が違うので、無理でしょ。それに職場徒歩30秒の私にそれ言います?」

素直な感想を言う。

なんかよくわからないけど、肩を落としているようなので、「そんな事より上田に向かって出発しますよ」と肩を叩く。

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