月とスッポン  牛に引かれて
見るからにテンションの低い大河。

ご機嫌伺いをするべきか迷うところではあるが、こういうのがイヤで一人で行動している事を思い出す。

ふぅと大きなため息が出る。
これでは、大河が私にご機嫌伺いをしろと言っている感じになる。

めんどくさい。

いっその事、大河を長野駅で下ろそうか?
善光寺は駅が近かったはず。ここからでも歩いて行けるはずだ。

「降りませんよ。帰りませんから」

なぜわかった。

大河を見れば、こちらを見ている。

「少し調子に乗ってしまっただけで、機嫌を損ねたわけではありません。自己反省中です。なので、1時間程時間をください」

自己申告したのだから大目に見てあげようでないか。

「上田に着くまでにおわらないようでしたら、上田の駅で降りてもらいます。それでいいですか?」
「それでお願いします」

「では大人しく助手席に座って」

「次は私です」
と力なく抵抗する大河を助手席に押し込む。

「無言でただ乗ってるだけ、拷問ですか!
大人しくこれでも見てて下さい」

双子の姉弟が成長していく中で、人生の選択に迫られる母子の物語を流し、上田に向かって出発だ。
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