月とスッポン  牛に引かれて
 
 開放感のあるホールで、サンドイッチを食べ、コーヒーを飲みながら、「あの絵画はフランスのどこから来たのだろう」「今度どこへ行こう」とスマホをいじる。

急に暗くなったと顔を上げれば、そこには見た事のある顔が二つ並んでいた。

うん、無視しよう。

「次はいつ行くんですか?」

視界が明るくなったかと思えば、2つの顔は勝手に空いている席に座り始める。

大きなため息をあえてつく。

「なんでいるんですか?」
「この上でランチミーティングをした帰りです」

そう言うことではない。

「そのまま帰ればよくないですか?」
「その帰り道でコーヒーを買って帰ろうかと思ったら、茜がいたので、つい」
「ついって」

「お前ら、仲良いな」

二人のやりとりを見ていた慶太郎がしみじみ言うので睨む。

「おぉ、怖っ」

大袈裟に言うが、私はその後ろのお姉様方が怖い。
さっさと退散してもらうのが、賢明だ。

「どこにも行く予定はありません。ただ、行きたいと思っている場所をピックアップしていただけです」
「そう言うことにしておきましょう」

「おかなくても、そういうことです」
「お前ら、仲良いなぁ」

「一晩を共にした仲なので」
「言い方!」

楽しそうに去っていく大河。
意味深に私の肩を叩いて、大河の後を追う慶太郎とお姉様方。

小さくなっていく大河達を見ていたら、大きなため息が出た。
ざわついたカフェテリアはすぐに静寂を取り戻すも、
居た堪れなくて、コーヒーを一気に飲み帰路につく。

これがほんの半月前の出来事。

なぜお前がここにいる。


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