月とスッポン 牛に引かれて
「っていうか、なんで後から来たくせに前から来るんですか!」
こんな気持ちになるのは、感傷的になったせいだ。
そんな気持ちを誤魔化す。
「上田城のお堀ですよ。廻ってから城内へ行くと思うじゃないですか!」
「知らんし、何もないし」
お堀を指差し言う。
「堀と土塁で囲まれ、虎口に石垣を使った簡素な城ですが、2度も徳川の大軍を撃退し、天下にその名を轟かせた難攻不落の城ですよ」
「そうなんですか」
「最強と言われている城はいくつかあります。熊本城、江戸城、大阪城などが有名ですが、戦国時代最中に建てられ、戦火を生き延びた上田城こそが最強だと私は思います」
「そうなんですか」
何事もなかったかのように、手を繋いで歩き出す。
大河の講義は止まらない。
「真田昌幸により築城され、徳川の私怨ともとれるほど徹底的に破壊されたにも関わらず、人々の心に残り再建された城ですよ。じっくりと見たくないですか」
「そうなんですか」
「徳川家康が、その歴戦中唯一の負け戦が武田信玄との三方ヶ原の戦いだと言われていますが、実際は勝率52勝10敗12分だそうです。
ちなみに1位は毛利元就。中国地方を中心に活躍した武将ですね。その勝率49勝9敗2分。信じられない勝率です」
「そうなんですか」
話が変わった、よね。