月とスッポン  牛に引かれて
大河による講義を右から左へと流している間に、
あの映画のヒット祈願がこの場で行われた事に浸ろうと思っていた真田神社も、
藩主屋敷に繋がる抜け道があるとされる井戸を覗く事も、
念願の本物の上田城櫓門から「ただいま」と映画の中に入った気分になり事も、
全部終わって車まで戻ってきてしまった。

もう映画の世界ではなく、真田の世界だ。

あの気持ちを返してくれ!

とさえ思う。

「どこの武将も、後継者問題を抱え滅んでいった家は少なくありません。260年もの間頂点に居続けた徳川家は、一族としては最強ですね。ただ、家を継ぎ続けるという事に関しては、今上天皇で126代。 約2700年にわたって続いていて、実在性に諸説がある初代の神武天皇から25代の武烈天皇までをのぞいても、1400年以上の歴史がある皇室は驚異的です」
「そうなんですか」

運転席に座りエンジンをかけても、大河の講義は終わらない。

すでにどうでもいい。

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