月とスッポン  牛に引かれて
いざ参らん
 その日は、仕事中も休憩中ずっと頂いた連休をどう使うかで、頭がいっぱいだった。

奈良再チャレンジもいいし、奈良に行ったのならやはり一度は伊勢にも行かないと

そう思うだけで、仕事も楽しくなる。

「茜ちゃん、今日は一段と元気がいいねぇ」
「明日から連休貰ったんですよ!もうどこに行こうかしか考えてません」

元気よく答えると、行き先を提案される。

「私の故郷なんだけど・・・」
「あっ、あの映画の舞台なんですか!その案、頂きます」

連休の行き先、ゲットだぜ!

「ここからだったら3時間ぐらいで行けちゃうから」
「あそことかこっちとか見てほしいな」
「だったら、あそこは欠かせない」
と常連さん達におすすめを教えてもらう。

常連さん達と盛り上がっていると、奥からひょこっと達ちゃんが顔を出した。

「そこに行くなら、酒蔵によってなんかオススメを一升買ってきて」
「了解」

「で、何時ごろ出る予定だ?」
「4時半か5時ぐらい?まだどこから行くか決めてないけど、それぐらいだと思うけど。なんで?」

「あ、あー。えーとだなぁ」

歯切れが悪い。

「そう、朝早く出るようだったら、キリがついたら終わっていいぞ」

親指を上げ、「うん、そうだ」と達ちゃんが言う。
他のスタッフも、「連勤だったので、あとはやります」と言ってくれたので、お言葉に甘える事にした。

たまにはいいよね。

そう思って、遅い晩御飯を食べながら、行き先を考え、寝た。

< 3 / 101 >

この作品をシェア

pagetop