月とスッポン  牛に引かれて
カツカツと下駄の音が響く。
歩き慣れない私は、何度かつまづきそうになる。
こういう時、大河の手がありがたい。

「和歌山県にも行かないと行けませんね」
「なぜ?」

「真田昌幸と繁信は和歌山県高野山で蟄居を命じられ、九度山に移り住み。昌幸はその地で亡くなられています。その後火葬され上田の長谷寺に移されたとされています。ですが、それも分骨された一部で、死後なお昌幸を恐れていた家康が九度山から出る事を許さなかったそうです。なので、まずは九度山から詣るのが筋かと」
「はぁ。まぁ、お気をつけて」

「茜も一緒ですよ」
「なぜ?」

「行きたくないですか、和歌山」
「行きたいな、行きなくないかと聞かれれば分かるそりゃ行きたいですよ、和歌山」

「ですよね」
「でも、私が行きたい和歌山は熊野古道なので、別行動でいいんじゃないですか」
「そんな寂しい事を言わないで下さい」

なんてくだらない事を話していれば、3カ所の飲泉の飲み比べを終え宿に着く。

今日もいっぱい歩いて、お腹いっぱい食べた。
少し古ぼけた宿が家に帰ってきた感じがする。
大きなあくびが出る。

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