月とスッポン  牛に引かれて
そして、朝出発しようと車に向かえば
少し大きめのトートバッグを持った大河が立っていた。

なぜおまえがここにいる。

「おはようございます。ちょうどいい時間だったみたいですね」

何がちょうどいいい時間なのか。
うん、見なかったことにしよう。

鞄を車に乗せようと鍵を開ければ、当たり前の様に大河も乗り込んでくる。

「今日はど平日で、私は今から一泊するつもりでいますけど、まさか一緒に来るつもりではないですよね?」
「はい。そのつもりで休みを頂きました」

大きなため息をワザとつく。

「簡単に休みが貰えるほど暇なんですか?」
「いいえ。大きな商談が控えていますので、普段よりも忙しい日々を送っています」

「なら、遊んでる場合じゃないじゃないですか」
「はい、そうですね。ですが、前回奈良に行った後とても調子が良く、仕事が捗り、それが今回の商談に繋がりまして」

「リフレッシュって大切ですね」

なんてしみじみ言っているが、それとこれは話が別だろ!

「リフレッシュなら、一人で出かければ良くないですか?」

絶対に引かないパターンだとわかっているが、一応言ってみる。

「茜が出掛けるのですから、一人で出掛ける必要ありませんよね」

ちょっと意味がわからない。

「普段自分では選択しない場所に行くのは、新鮮ですね」

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