月とスッポン  牛に引かれて
貰っていい物なのか?
大河の顔を見れば“よかったですね”と書いてある。
ならば、お言葉に甘えよう。

手に取れば、本当にちょっとした買い物にちょうどいい大きさで手に馴染む。

「ありがとうございます」

嬉し過ぎで顔がニヤける。

もう一個あったら海とお揃いに使えるのに。

売っていないかと辺りを見回す。
でも「もう一つ下さい」とは言えない。

「この籠、もう一つありませんか?」

大河が2人に聞く。

「あるけど?」
「では、頂けませんか?もちろん、お代は払いますので」

「ちょっと待ってて」
と女将が中へと戻る。

「大河が籠を欲しがるなんて珍しいですね」
「妹が出来ましたので、たまにはお土産でも買って行こうかと」
「そうでしたね」

表面上の緩やかな会話が、逆に怖いと思うのは私だけだろうか?

「同じ物はないの。だから好きな色選んで」

女将が和かに会話に入っていく。

この女将、やりおる。

「茜、海が好きそうなの選んで」

お代官様と越後屋の2人は放っておいて、ウキウキと鞄を選ぶ。
オソロもいいがイロチもいい。

「大きさはちょうどいいけど、春夏にしか使えない。こっちなら年中使えるけど、ちょっと大きい。これは」
と女将からアドバイスをもらいながら2つ選ぶ。

超楽しい。
センスの良い姉と買い物をするってこんな感じなのか!

なんとか2つ選び、安曇野へと出発した。
< 43 / 101 >

この作品をシェア

pagetop