月とスッポン  牛に引かれて
大河はさっさと会計を済ませてしまう。

袋に入れられたパン達を持って、「ありがとう」と爽やかに店を出ていく。

取り残された私と店員の目が合う。
微笑まれた。

苦笑いをしながら、お礼を言い、大河の後を追う。
しれっと助手席に座っている。

「次は私なんだけど」

そう呟きながら、籠とパンを抱えて座る大河を横目に車に乗り込んだ。


広がる青い空、その光を一身に浴びるどこまでの広がっている様な緑の芝生。
の上に、敷かれたレジャーシート。
しかもポリエステルじゃない布の良いやつ。

どこか欧米の映画のように籠から取り出されたおかず達に、北欧の人気家具屋でよく見る牛乳瓶の様なプラスチックの透明な水筒に入ったお茶。

これ、返さないといけないやつじゃね?

当然のように広げ始め、パンまで並べ始める。

「どうぞ」と座る場所まで指定された。
「どうも」と座るが、何これ?

私の知っているピクニックじゃない。絵画の世界。
これが上流階級のピクニック?

やろうと思っても絶対に自分じゃ用意しない。

こんな機会2度とない。
ならば、写真に収めておかねば。

定番の卵焼きに、里芋の煮物、蓮根のきんぴらに唐揚げ。デザートに果物まで入っている。

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