月とスッポン  牛に引かれて
もう一度大きなため息を吐き、この不毛なやり取りを断ち切る。

こうなったら、絶対に引かない。
あーだ、こーだとやっておる方が労力と時間の無駄遣いだ。

私が諦めたのを悟った大河が
「では、行きましょうか」
と和かに出発の合図をした。

私はまたあえて大きなため息を吐き
「わかりましたよ」
と出発の準備を整える。

今回の目的地の一つである、あの映画の聖地巡礼の旅。

復習しようと、スマホを操作し再生をする。

「さぁ、出発です」

何度も見た映画は見なくても、内容が頭に入っている。

珍しく静かだなと横を見てみれば、大河が真剣に見ている。

「こいこい」

セリフを一緒に言っても、反応なし。
うん、大人が見てもいい作品だろ

「よろしくお願いしまぁす」

エンディングが流れれば、横から深いため息が聞こえる。

「見入ってしまいました」
「でしょうね」

SAに入れば、さっきまで見ていた作品の感想が止まらない。
気持ちはわからなくないが、休憩の意味はあるのだろうか?

そして、車に戻れば当たり前のように大河が運転席に座っている。

こいつどこへ行くかわかっているのか?

「長野ですよね。とりあえず諏訪湖SAへ向かいますね」

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