月とスッポン  牛に引かれて
「日本のお城は“山城”と“近世城郭”に分けられるそうです。“山城”とは、その名のとおり山に築かれたお城で自然の山を削り、掘り、盛り固めて、堀や土塁、曲輪などを造成したお城です。重要なのは、全体がほぼ[土]で築かれており、建物は木造の簡易なものだったため、遺構はほとんど残っていないことです。山城は、天下が統一される前、戦が日常的に起こっていた南北朝時代や戦国時代に爆発的な数が築かれ、“中世城郭”とも呼ばれています。対して、織田信長の安土城以降、江戸時代にかけて築かれたのが、天守の建つ“近世城郭”です。山城が土づくりであるのに対して、近世城郭の多くは石づくりで、高い石垣・広大な水堀・瓦葺きの建物などを備えています。山城とは違って、平地や低い丘に築かれているものも多く、松本城もその一つですね」
「そうなんですか」

今回も長いなぁと思いつつ、話を受け流す。

「日本のお城はかつては 4~5万ほどありましたが、現在一般的に見学できるのは 200ほどで、そのうち江戸時代以前からの天守が残されているのは12城。ちなみに最初の天守は、織田信長が建造した安土城の天守といわれています。江戸時代に入ると、徳川幕府の“一国一城令”と“武家諸法度”により一部の例外を除いて、大名の居城となる1城以外の破却と新築工事の禁止が定められます。この時、全国に3000ほどあった城が170ほどに激減したといいますから、実に約95%を失ったことになりますね。その後、明治時代の“廃城令”を受け、昭和に入るまで20まで減り、第二次世界大戦の爆撃や戦後の失火で、残ったのが現存12天守だそうです」
「それぞれにドラマがありますね」

よし、相槌は間違っていない。
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