月とスッポン 牛に引かれて

最寄りの駐車場に車を停め、小さな広場を抜ければすぐに内堀が見える。

朱色の埋橋越しに見える松本城城の貫禄に息を飲む。

ベストショットのアングルを模索していれば、私の横に大河が立つ。

「現存12天守のうち、国宝指定を受けた天守を持つ城は今から向かう松本城、姫路城、彦根城、犬山城と、2015年に再指定された松江城を含めた5城が“国宝5城”、重要文化財指定を受けた天守を持つ弘前城、丸岡城、備中松山城、丸亀城、松山城、宇和島城、高知城は“重要文化財7城”と呼ばれます」
「制覇したいですねぇ」

講義は続いていたようだ。

「はい。築城以来、戦災の被害を受けることのなかった姫路城は、建築物のほとんどが創建当初のまま維持されていることから、近世城郭の建築技術を知る貴重な城としても重宝されていますので、ぜひ自分の目で見たいですね。もちろん、漆黒の外観が美しい松本城は、現存天守の城郭の中では唯一の平城で、国宝に指定された天守は、戦国時代と江戸時代の2つの時代を融合させた『連結複合式”の天守群で、他に類を見ません」
「そうなんですね」