月とスッポン  牛に引かれて
「こちらから見える小さな建物が辰巳附櫓と月見櫓で江戸時代初期に、大天守、乾子天守は渡櫓で連結されていて戦国時代末期に造られた、他に類を見ない構造となっています」
「ほー」

内堀沿いを歩いて、観覧券を購入し黒門をくぐる。

広がる緑の芝、重厚感のある黒漆喰と晴れた青空のコントラストが一枚の絵のようだ。

「大天守の外観は5重ですが、中二階があるので内部は6階になっているそうです」

実際に5階なのか数えようとしても、待ちきれない大河に天守へとひっぱっれる。

石落を覗いたり、説明を読みながら、木張の床をゆっくりと歩きながら観て回る。

平日でも、さすがの松本城は人が多い。人の群れを避けながら上へと上がっていく。

5階に上がる急な階段は、大河が後ろにいるという安心感があった事は黙っておこう。

一番上まで上がれば、松本の街が一望出来る。

「周囲を山で囲まれた盆地の特徴がよくわかりますね」

歴史の授業の次は地理ですか?

「あそこに見える白い建物がわかりますか?」

大河が指す先に見える横長のビルを見つける。

「あそこまでが本来の松本城の城内だそうです」
「広っ」

「広いですよね。でも、1番は断トツで江戸城です。現在の皇居が江戸城の内郭です。外郭は神田駅周辺から新橋駅まで、四ツ谷駅からは東へ市ヶ谷駅、飯田橋駅、御茶ノ水駅からそのまま隅田川へと達していたそうですよ」
「わかりやすいんだか、わかりにくいんだか」

「おおまかに言って山手線内の四分の1ぐらいでしょうか」
「江戸城、凄っ。今度、行ってみよ」

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