月とスッポン  牛に引かれて
「またまた」と言いながら、ぶつかってこようとするので、回避を試みる。

そんな小学生みたいな事をしながら、車へ戻ってきた。

いい加減勘弁してくれと、大河を助手席の上へ追いやる。

「これでお終いです。次やったら、ここで置いていきます」

『ここに置いてくぞ』

は、効果てきめんのようで、

「わかりました。終わりにします」

と素直に助手席に乗り込んだ。

『いい加減にしなさい』
『もう帰るわよ』
『もう知らない』

よく聞く親が子供に言っている台詞を、なぜ私は自分より年上の大人の男に言っているのだろうか?
いつ、こんな大きな子供が出来たのか?

『もう、仕方がないわね』

とは続かないのは、赤の他人だからだろうか?

そもそも私と大河の関係は何なのだろうか?

海の義理の兄。大親友の兄。

他人じゃね?

ではなぜ、その他人と行動を共にしているのか?
なぜ2回もお泊まり旅行へ行っているのか?
なぜこんなに気負いもせず接しているのか?
なぜ一緒にいて不安がないのか?
なぜ、なぜ。

なぜ?
なぜこんな“なぜ”が溢れてくるのか?

頭の中がはてなマークでいっぱいになる。
溢れでそうになる前に、目的地の酒蔵に着いてしまった。

< 62 / 101 >

この作品をシェア

pagetop