月とスッポン  牛に引かれて
行きよりも少しだけ湖に近づいたSAに到着すれば、大河はすぐにスマホを取り出しどこかに電話している。

ジェスチャーで先に中に入っていると使えれば、了解と手をあげた。

トイレを先に済ませても、お土産屋さんを見て回っても、大河は現れず、電話をしている姿が見える。

2種類のおやきとお茶を買って車に戻る。

1つを大河に渡し、助手席に押し込めた。

電話を止める気配がないので、私が聞いていても問題がないのだろう。

気にせず、買ったおやきを食べながら出発だ!

「そうですか」「そうですね」「ではそれで」
と「それ」を繰り返しながら、おやきを食べ始める。

中身は気にならないのか?

「ん?」

中身にたどり着いたようで、大河の時間が止まる。

パッケージを見ると、私のおやきを取り上げ、一口。

おい。しれっと自分のと交換するな。

運転中の私、電話中の大河。黙って、おやきを食べ進める。

もっと癖があるかと思ったけどこっちもいけるなぁ。

車が増え、一般道のスピードまで落ちていく。
またしれっと人のおやきを奪い自分のと交換する。

「えぇ、そうですね」

と話を続けているから、言いたい事すら言えない。

仕事をするなら、1人で電車で帰れや。密室で、気まずいんだよ。

「わかりました。ではそれでお願いします。戻り次第確認しますので、データの転送をお願いします」

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