月とスッポン  牛に引かれて
ひとまずビールをキッチンに置き、手を洗う。
チキンを大河から奪い床に広げる。

オズオズと部屋に上がった大河は

「引っ越してきたばっかりなんですか?」

と私を見下ろす。

気にせず、チキンを頬張りながら
「海との同居を解消してからなので、2年いや3年ぐらいになりますかねぇ」
と答える。

キッチンに置きっぱなしのビールを一口飲み、言うセリフが
「何もないじゃないですか」
は酷くないですか?

「ベットと冷蔵庫、ドラム式の最新洗濯機があります」

自慢の子たちを紹介したのに、大河は深いため息をつく。

「普段どこで食べているのですか?毎回床ではないですよね」

おかん大河が発動された。

「キッチン?」
「まさか立ったままではないですよね?」

「机ぐらい買いましょう」
「必要あります?」

「あるに決まっているではないですか!私の部屋よりひどい」

こっちこそ、人の城を言いたい放題じゃないか。

不満に思いつつ、チキンを頬張る。

「掃除が楽だからいいんです、私はこれで!文句があるなら、帰ればいいじゃないですか」
「せっかくなので、チキンとビールは頂きます」

ちゃっかりビールを片手にチキンを食べ始める。
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