月とスッポン  牛に引かれて
頬張りながらも、部屋を見渡し、ため息をつき、何か言いたそうな大河。

「なんなんですか?言いたい事がはっきりしましょう」
「この部屋について言いたい事が山の様にありますが、言葉が見つかりません」

さようですか

「年末年始の予定はどうなっていますか?」

急に話が変わったな。

「忘年会シーズン突入して、クリスマス明けたら『お節』作りに入るので、店の営業はしません。31日に『お節』の受け渡しをしたら、年内の営業は終わりで、新年は市場が開始する4日ぐらいから店も営業開始ですね」
「お店の予定ではなく、茜の予定です」

「私ですか?」
「いつもなら夕方ぐらいまでお節の手伝いをして、夜と新年は短期バイトを入れてますけど。今年は、どうしようかな」

「その短期バイトは入れないでください」
「なんで?」

「こちらの予定がはっきりしましたら、追って連絡します」
「なんで?」

私の疑問に答える事なく
「謙太郎がついた様なので」と立ち上がり
「私が出たらすぐに鍵をおかけるんですよ」
とおかん大河が言って部屋を後にした。

こうして終えた長野への旅。
やな予感だけが、残る旅となった。
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