月とスッポン  牛に引かれて
「歴史学者の本郷先生の最新本です」
「歴史で最新本ですか?」

「はい。一つのテーマから見る日本中世史はなかなか読み応えがあります」
「それは興味深いですね。実は最近、神社仏閣や城跡など、歴史的建造物を訪れているのですが。
 もう少し詳しくなりたいと何冊か本を読んだのですが、書く人や出版された年代で書いてある事違っていて、どれを手に取ればいいのか、どれが正しいのかわからなくなってしまいまして」

僕が答えれる内容でほっとした。

「そうだったんですか。確かに難しい問題ですよね。立場が違えば、全く逆の意味を持っていたりしますから」
「恥ずかしながら、日本史を専攻して来なかったので、基本知識しかなく。改めて見ると、私が学んでいた時と変わっている事に驚きました」

「そうですね。現在では、江戸時代に“士農工商”はなかった事がわかりましたし、幕府は国を閉ざしていた認識はなかったため“鎖国”の扱いも変わってきているそうですから」
「そうなんですか。勉強になります」

「歴史は残された物や建造物、文書などから研究するものですから、新たに発見されて今までの出来事が覆される事は、よくあったりしますし」
「歴史とは過去の出来事だと単純に思っていましたけど、今も動いているんですね」

「そこがまた面白いところでもあります」
「そうなんですね」

会話している。
雲の上の存在だと思っていた人物と会話をしています。

今日は記念日になりそうです。

のどかな時間が流れていきます。
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