月とスッポン  牛に引かれて

不穏な空気を感じ取れば、ダークなオーラを纏った本庄謙太郎が立っていました。

思わず立ち上がり「お疲れ様です」と頭を下げます。

「巻き込んで悪かったな」

僕の肩に手を乗せ、座る様に促されました。

部署は違えど、交流関係が広い本庄さんは、我が社の皆のお兄さんで皆の弟の様な存在です。

のどかな空気が、急に冷たい空気に変わり、本庄さんが本部長を睨んでいます。

「勝手に行かないで下さい」
「忙しそうだったので」

「あなたの時間を作るために、時間調節をしていたのですが」

にこやかに怒る本庄さんに本部長は「それはご苦労様です」とにこやかに微笑まられています。
不穏な空気が怖いです。

本庄さんの後ろに連なる良い匂いにする集団はあえて見ないようにしよう。

僕なんかが本部長を独占してごめんなさい。
この状況が恐ろしいです。

「なんの話をしているんですか?」

空気を読んだか、読んでいないのか?
集団の中から1人の女性が話に割って入ってきました。

華やかな香りに顔を上げずに
「歴史についてです」と答えます。

「なるほど、なるほど。それはざっくりとした括りですね」

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