月とスッポン  牛に引かれて
慶太郎さんがしれっと白状しました。

「東雲が仕切るのが気に入らなかったもので、つい」

絶対に悪いとは思ってませんよね。

僕は困った顔で慶太郎さんを見ます。

そんな事お構いなしに僕に抱きついたまま、東雲クミは自分の事の様に僕の事を話し始めます。

「ター君は、日本の歴史全般に詳しいんですよ。なので、困った時にター君です」
「いえ、僕は皆さんと違って浅く広くですから」

僕の隣に座り、猫のように擦り寄ってきました。
あいかわらずかわいいです。
2人にはクミはもう見えていない様です。

「そういう慶太郎は?」

本部長が本庄さんに話をふります。

「俺?俺はただこいつらのマニアックな話を聞きながら酒を飲むのが好きなだけ」
「その気持ちはわかる気がします」

「それで、神社に行った際なんですが」
と聞けば、「待ってました」とばかり知識の披露が始まりました。

我々では当たり前だと思っている事も、本部長には新鮮な様で、「ではこの場合は」とか「そういう意味があったのですね」と、嬉しい反応に話が盛り上がっていきます。

「長野」と聞けば、「上田の真田家について」や「松本城から入り、城について」の談義が始まりです。

「こっちの説が有力だ」「こっちの説の方が物語がある」
など自分たちの持論を披露していきます。

あまりマニアックな道に入りそうになるのを止めたり、解説したりと終わらない歴史談義の夜と共に夜が更けていくのでした。
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