月とスッポン  牛に引かれて
「武士として己の想いを貫くか、家を残す為に己の想いを留めるか。真田家を思うと考え深いものがありますね」
「何かを背負う人間は大変ですね」

適当に聞き流しておこう。

真田家についての語りが止まらない。
真田昌幸に、武田・徳川と飛んで、真田信繁に戻ってきた。

「真田信之のお墓参りをするのもいいかもしれませんね、きっと松代だと思いますので、後で調べてみましょう」

趣旨変わってる。そうじゃない。今回は戦国武将の旅ではないんだ‼︎

話を戻さねば、と一気に断ち切る。

「じゃなくて、さっき流してた映画の舞台が上田なんです!おばあちゃんの家の門が上田城の櫓門なんです」
「そうなんですね」

がっかりしてますけど、真田縛りが良かったですか?

次のSAの案内が見えれば、ようやくこの話から解放される安堵感でいっぱいだった。

電話をしている大河を放置して、眺望を楽しむ。

早朝の澄んだ空気に包まれながら、眼下に広がる湖の向こうの丘を見つめる。

あの辺りだろうか。

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