月とスッポン  牛に引かれて
「私は会社に携わる予定もないから必要ないって思ったんだけど」

若宮大路を進みながら、たどたどしく海が説明をする。

つまりだ。
いずれ大河が社長に就任する為に反対勢力が海を担ぎ上げない為に先手を打っておく必要がある。
と言うわけか。

金持ちは大変だ。

一の鳥居に近づく。
少しだけ高い位置に立っている私達。
鳥居の側で知った顔が2つのツインタワー。

目が合った気がする。
すぐに目を逸らした。この距離だ。
気づいていない事を祈り、見なかった事にしよう。

引き返すという手段も合ったが、ここまで来たら行きたい、鶴岡八幡。

ここは戦略的待避。

海の腕を掴み、後ろを向く。

愛するダーリンと引き離して申し訳ないが、これからずっと一緒にいるのだ。この時ぐらい許してもらおう。

右へ行くか、左へ行くか、それが問題。

右の可愛らしいキャラクターのカフェが目に入る。大人の男2人には入りづらかろう。

「ちょっと寄り道したい所があったんだよね。帰りは通らないから今行こう。すぐに行こう」

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