月とスッポン  牛に引かれて
撮り終えた私達はワッフルを食べ始める。

わちゃわちゃしていた間に買い求めて来たと思われるコーヒーを飲みながら、生暖かい目で2人は私達を見ている。
見ている。見ている。
視線がウザい。

「にしても、よくは入って来れましたね」
「こちらに気づいて向きを変えましたよね」

質問を質問で返された。
「なんのことですか?気づかなかったなぁ」
しらを切ってみる。

「気づいた?」
「いや。大河の後をついて来たら、お前達がいた」

そこ、確認し合うフリをしながらいちゃつくな!

「あちらの北条泰時邸の跡地の発掘された遺跡を見る事が出来る事は知っていましたが、こちらは知りませんでした。茜は詳しいですね」

人の頭を撫でるでない!
そしてそこ、そんな顔でこちらをみるな!

頭に乗った手を振り払う。

「鎌倉幕府の執権職を世襲した北条氏は伊豆出身の豪族が始まりです。戦国大名北条氏とは別物なので混同を避けるため鎌倉北条氏、もしくは代々鎌倉幕府執権職を継承したことから執権北条氏と呼ばれていますね。なので、戦国大名の北条氏は後北条または居城のあった小田原の地名から小田原北条氏とも呼ばれます。日本初の戦国大名は伊勢盛時こと北条早雲なんですよ。後北条氏は伊豆を手中に収める際に、伊豆では名が通った“北条”と名乗ることで、自分が“北条家”だと正当化したとされてます。もちろん、勝手には名乗れませんので、名乗る為に鎌倉北条氏の血筋の女性を迎えたそうなので、全く血が入っていないとは言えないそうです」
「それはいつの時代も男の名誉に振り回される女の話ですか?」

食べ終わったものを片付けて店を出る。大河の講義は終わらない。
< 84 / 101 >

この作品をシェア

pagetop