月とスッポン  牛に引かれて
すでに海と慶太郎は、無関係だと2人で並んで前を歩いている。受講者は私だけの様だ。

「そうなんですが、そうとも言い切れないのが歴史ですね。微かに繋がった“鎌倉北条氏”の血は、“後北条氏”に繋がれます。“後北条氏”は小田原の合戦で滅亡していますが、その前に今川家に嫁いだ早川殿は生き逃れます。今川家も徳川家の傘下に入り生き延びるのです。そして、その血は明治時代まで続いていました。最後の末裔は女子しか子供がいなかった為、今川家としては終わりを迎えていますが、今も今川の血、引いては北条家の血は続いています。分家でありますが“金沢北条”の末裔は今でもありますよ。それに、越後の虎、最強の軍神とも言われた上杉謙信の元に“北条家”から養子に行った方もいましたね。残念な事に家督争いに負けて亡くなった」
「景虎ですね」

「よくご存知ですね」
「新潟の酒蔵がその名前で日本酒を醸していますから。料理の邪魔をしない新潟らしい淡麗辛口酒ですよ」

「そうなんですか!では新潟に行かないと」
「行かなくても東京で手に入りますけど」

この人はなぜ現地で買おうとするのか。

それよりも、海との距離が開いていく。

「帰りにあれを買って帰ろう」「綿菓子懐かしい」「あれなに?」とキャッキャ言いながら参道に並ぶ出店を見ながら海と歩く予定が。

なぜ、こうなった。
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