月とスッポン  牛に引かれて
鎌倉の鳩を眺めながら、大分へ思いを馳せる。

授与所から戻った海達と合流して階段を降りれば、大河はいそいそと御朱印の列に並ぶ。

「やっぱり買ってくる」

授与所に向かう海に「あそこにいるって大河に伝えて」と慶太郎が言う。

そして「お前は付き合え」と私の背中を押した。

背中を押され、休憩所へと押されていく。

ポケットから取り出した電子タバコをふかし始める慶太郎。

「お前は吸わんの?」
「私はスモーカーではないので」

「前は吸ってたじゃん。やめたの」
「やめたって言うか。あれは」

私はスモーカーではない。ただ大小問わずやらかした時の戒めというかストレス発散というか

そんな言い訳をすれば「別にどうでもいいんだけどさぁ」と興味なさげに慶太郎がため息をつく。

どうでも良いなら聞くなや。

「お前らいつもこんな感じなのか?」
「こんな感じって?」

「大河のやつ、自然とお前の手を繋いでた」
「あぁ、こんな感じだね。迷子にならない様に?でしょ」
「イヤ、違うだろ」

そうなのだろうか?
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