月とスッポン  牛に引かれて
見つめ合っている彼らを遥か遠くから見ている。

そう思うと、エモい。

「何が見えるのですか?」
「過去と未来が合わさって、初めて出会い、別れを悲しむ男性が見えます」

「ごめんなさい、意味がわからないです」
「でしょうね」

湖の反対側にある山の斜面を指差す。

「あそこら辺だと思うんですけど。映画の舞台になった丘があるんです。その反対側がこのSAって話です」
「善光寺に向かう間、見ましょう」

「別にいいですけど、善光寺からのスタートするんですか?」

気ままな旅の主権を握られている。

まぁ、幾つかのルート候補の一つだからいいけど。
いいんだけど、不服だ。

「先ほど慶太郎に聞いたら、上田に知り合いが宿を営んでいるそうなので、夜はそちらに向かいたいと思います。
なので、善光寺を観て、上田に移動して明日松本に向かいましょう」

困った時の慶太郎。

なんだか申し訳ない。こんな朝早くから。
うん、海と一緒に楽しめる様に何か買っていこう。

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