月とスッポン  牛に引かれて
行き交う人混みの中、お宮参りと思われる家族連れを眺めながら呟く。

「子供は少なくても3人ぐらい欲しいから。彩華さんに全員抱いてもらわないと困る」
「産むのは海だけどな」

当然の如く言う慶太郎に冷静にツッコミを入れる。

「彩華さんはお前の花嫁姿も見たいと思ってると思うぞ」

同じ様に赤子を連れた家族連れを眺めながら慶太郎が言う。
それはなんとなくわかっている。
彩華さんは私の幸せも願ってくれていた事を。

でも
「私は無理だなぁ」

そう思っていれば「そんな事ないだろ」と心ない答えが返ってくる。
ここは一度、念押しをしておこう。

「誰かとずっと一緒に生活なんて想像もつかないですし。
繋ぎ止めておく魅力?力なんて私にはないなぁ。
それにいつか終わりが来るってわかってるなら、始めない方が良くないですか?
誰かの人生に責任を持ってもらうのも、持つもの私には無理だなぁ」

わかってますよ。いくら居心地がいいからってずっと一緒にいられないことぐらい。
いつか来る日までと先延ばしするつもりはありません。それ以上、一緒にいるつもりはないですよ。

とアピールしておく。

物凄く深いため息が聞こえるが、私のアピールは通じたのだろうか?

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