月とスッポン  牛に引かれて
首を傾げる私に頭を掻きながら慶太郎は続ける。

「それにあれはなんだ」
「あれとは?」

「必要以上にもモノを言わないアイツがなんであんな講釈を垂れてるんだよ」
「さぁ?」

「さぁって、ウザくないのか?」
「別に。勝手に話してる分には、なんとも思わないけど。言えば止まるし」

目を見開き私を見る慶太郎。
そんなに大きな目が開けれたんですね。

「言えば止まるしって」

項垂れ慶太郎。

「それに楽しそうだし」

一応の大河のフォローをしてみる。

「あれが楽しそうなのか?」

余計に項垂れた。

遠くからやってくる大河と海に手を上げ合図を送る。

「ほら、御朱印ゲットしてめちゃ嬉しそうじゃん」

私の発言に大河を見る慶太郎。

「わからん」
と頭を抱えているのは放置でいいのだろう。

「これはあーちゃんの分。お揃いなんだよ」

無邪気な笑顔に癒される。

「ありがとう」
海に抱きつこうとするのを慶太郎と大河に止められる。なぜだ。解せない。

「そういえば、お二人はなぜ鎌倉へ」
「仕事が早く終わったので、海のパーティ用の服でも見に行こうかと思って」

なるほど。そういえば年末にパーティとやらがあると言っていた。お披露目に似合った服を、着飾った海は可愛かろう。
写真でも送ってもらえないだろうか?

「なら私は適当に帰るよ」

と言いかけると海に腕を掴まれる。

「その事なんだけど」

真剣な眼差しで私を見つめる。
やな予感しかない。
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