月とスッポン  牛に引かれて
「あーちゃんも参加ね」
「はあ?いや、無理でしょ。ってか嫌だ。なんの関係もない私が参加なんて出来るわけがないじゃん!
それに年末でしょ?無理無理。1番のかき入れ時だよ。申し訳ないが、いけんよ」

必死に抵抗を見せても海が腕を離さない。

「あーちゃんが参加しないなら、私も参加しない」

結婚は嬉しいけれど、お披露目はやっぱり嫌だったんだ。
だからと言って、人を巻き込むのはやめなさい。

必死に私にしがみつく海の背中を軽く叩く。

絶望している慶太郎の顔は面白いけど、可哀想でもある。
そして、その隣の男。ほくそ笑むな。やな予感しかしない。

「美味しいナンを提供しているカレー屋さんを知人から紹介して頂いたんです」

話が急に変わったな。
一体ナンの話をしているんですか?

「ナン。インドカレー。美味しい」
「開店まで少し時間がありますので、海の服を見ながら時間を潰すのはいかがですか?」

「そうだよ。あーちゃんの大好きなナンだよ!」
「みんなでナンを食べに行きましょう」

「イヤ、場所を教えて頂ければ・・・」
「少しわかりにくい所にありますので、案内致しますよ」

右手を海に左手を大河に奪われ歩き出す。
呆れ顔の慶太郎がため息をつく。

イヤ、お前はこの流れから私を助けろよ!
ドナドナするな!

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