月とスッポン  牛に引かれて
そんな事はお構いなしに女性達の会話は続いている様です。

「それでこの人に生まれ変わる」

令嬢を指しながら、力強く言う女性に

「「はぁ?」」

そこにいた者の声がまた重なりました。
思わぬ方向に話が進んでいる様です。

「えー、ズルい。私も、私も次の人生この人がいい」

海様も令嬢を指しながら、女性に同意します。

「バカなんですか?」

常務が中に割って入りました。
令嬢達は驚きと気まずさでなんとも言えない顔をしております。

それにしても、第一声がそれはいかがなものでしょう。
常務は令嬢達を気にすることなく、海様達と話を続けております。

「たとえ今亡くなったとしても、年上でしかも今生きている彼女に生まれ変われるわけないじゃないですか」
「じゃぁ、乗り移る」

「ちょっと意味がわからないです」
「意味がわからない事がわからない。私は次生まれ変わったら、彼女になりたい」

「そう思う理由がわかりません」

常務の意見に私も同意致しますが、
常務、たくさんお話をする事が出来たのですね。
驚きです。

「なんで!お金もあるし、力もあるし、地位も名誉も頭脳も学歴も美貌もあるんだよ」
「性格悪いけどな」

ヤジを入れられる本庄辞書室長に、女性はグッドと言わんばかりに親指を上げられております。

「完璧。まさに理想」

「あの、握手してもらえませんか?」
「嫌ですわ」

女性の勢いに令嬢がたじろっているのがわかります。

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