月とスッポン  牛に引かれて
「きゃー、“嫌ですわ”頂きました」

令嬢に臆する気となく海様達が、歓声を上げました。

まるで目の前に憧れの推しが現れたように、お互いの腕を抱きながら喜んでおられます。

「彼女に憧れる意味がわかりません」

男性陣がうんうんと頷いております。

私の妻と娘もテレビの前で同じ状況を目にする事がありますので、なんとなくですが状況はわかります。

ですが、“令嬢達に”とおっしゃる男性軍の心情もわかるのです。

「はぁ、わかってないなぁ」

こんな事もわからないのかとため息混じりに女性が降りて令嬢を示しながら言います。

「自分の努力だけでは持つ事の出来ないお金も力も持っている上に、自分の努力で地位も名誉も学歴も美貌の維持も手に入れているってやばくない?それでなお、上を目指す向上心、追求心。マジ最高。私も生まれ変わって全てを手にしたい」

女性が熱弁を振い、最後にガッツポーズまでしておられます。

「愛は手に出来そうにないけどな」

本庄辞書室長がチャチャを入れれば

「金さえあれば愛なんてどうにでもなるじゃん。愛だけあって、金がない方が最悪じゃない?」

冷たく正論を本庄辞書室長に振りかざします。
この状況は一体どうなっているのでしょうか?

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